印材の種類
印材は以下の4種類に分類されます。
■ 牛角(うしのつの)
【黒水牛】 東南アジア、アフリカ産の水牛の角
【牛角(黒)】 黒水牛以外の牛角の黒印材
【牛角(白)】 従来のオランダ水牛純白
【牛角(色)】 従来のオランダ水牛色物
■ 象牙
【象牙】 象牙を加工した象牙100%の印材
■ その他の印材
①印材の原材料を正確に表示する
②印材名は不当表示に当たらない名称にする
主な印材の特徴
【柘】
•堅くて加工性に優れているため、櫛や彫刻、将棋の駒などにも使われる、日本人にとっては昔からなじみの深い木材です。
•最近は森林資源の不足によって、ツゲによく似たアカネ等の国外産のツゲ材がよく使われています。こういった国外産のツゲ類を業者間では「外材」と呼びます。値段は格安ですが、品質的にはやはり国内産のツゲには及びません。
•国内産の中でも鹿児島県産の薩摩柘など、産地を冠した柘が高級品とされています。
•価格的にはお手頃ですが、なんといっても木材のため、水牛や象牙などと比べると長年使っているうちに摩耗しやすく、印面が変化しやすいのが難点です。
【黒水牛】
•東南アジアやアフリカの水牛の角を加工したもので、そのほとんどが染色されており、濡れたような美しい光沢が魅力です。
•同じ黒水牛でも、部材を採る場所によって品質も価格もまったく違います。角の中心部分の部材は「芯持ち」と言い、最も密度が高く反りにくくて割れにくいため、高級品として珍重されます。
•象牙のように摩耗が少なく、押印した際の印影も鮮明です。
【オランダ水牛(=牛角)白・色】(=オランダ水牛)
•世界中に分布する陸牛の角を加工したもので、従来はオランダ水牛と呼ばれていました。
•茶色や黒といったブチ模様のあるものが「牛角(色)」ですが、業者は「オランダ水牛のトビ」と呼びます。ブチ模様のない純白や黄色に近い飴色のもの(=オランダ水牛の純白)が最高ですが、最近はなかなか手に入りにくくなってきています。
•黒水牛と同じく「芯持ち」が高級品とされ、摩耗が少なく印影も鮮明です。
【象牙】
•摩耗に強く耐久性があり、ひび割れもおこりにくく、彫刻のしやすさ、印影の鮮明さ、そして象牙本来の持つ生地の美しさからも、まさに「ハンコの王様」と呼ぶにふさわしい印材です。使い込めば使い込むほど美しい光沢が出て、年月とともに印肉の朱色が印面に浸透して上に上っていくのが象牙のハンコの値打ちとされています。
•象牙はアフリカ象の保護のため、1989年にワシントン条約で輸出入が禁止されましたが、日本国内では公的な管理のもとで販売が認められています。現在、国内で流通しているのは、輸入禁止以前の在庫か、一時的に解禁された際の合法的な象牙です。尚、国内で象牙製品を扱うためには、環境省及び経済産業省による特定国際種事業者としての認可が必要です。
久宝寺印房で使用している印材
■ 薩摩本柘
■ 黒水牛〈芯持〉
■ オランダ水牛トビ(=牛角【色】)〈芯持〉
■ オランダ水牛純白(=牛角【白】)〈芯持〉
■ 本象牙特上品
いずれも一本一本吟味した最高級品のみを使用しています。
久宝寺印房は正規の特定国際種事業者として認可されています。
事業者番号 T-5-27-0064
印材Q&A
久宝寺印房の店主に聞いてみました。
Q.最近、ツゲ以外の木材のハンコがいろいろあるようですが、それについて教えてください。 A.「彩華」などの名前で、木材を高圧で圧縮加工した印材が出ています。堅くて印刀ではなかなか彫りにくい印材です。生地をこそげるような形でしか彫れないので、綺麗な印面になりにくいんです。字数が少ない個人印ならなんとか手彫りでも彫れますが、字数の多い代表者印になるとお手上げですね。パソコンの機械彫りなら大丈夫だと思いますが、うちのような手彫り仕上げは無理です。 Q.象牙の印材に横目というのがあると聞きましたが、それは普通の象牙とどう違うのですか? A.普通の印材の場合は象牙の中心に沿って縦に印材を採るわけですが、横目の場合は中心に対して横(=垂直)に採ります。ですから、芯を中心にして丸い渦のような円状の模様が側面に出ます。この模様を「日輪」と名づけて稀少な物として販売している業者も多いようです。名前からして良さそうな感じに聞こえますし、見た目も面白くデザイン的には綺麗です。しかし、肌目が横になっているだけに、職人にとっては非常に彫りにくい印材です。これもパソコン機械彫りなら問題なく彫れるでしょうが。普通の象牙よりも欠けやすいので、当店では扱いません。 Q.マンモスの牙のハンコというのを最近見かけましたが? A.それほどたくさん出回っているわけではなく、印材として良質なものが安定して入手できるかどうかわからないので、うちでは扱っていません。 Q.水晶やメノウ、ヒスイといった石の印材もありますね。そういった印材は扱わないのですか? A.お客様のご要望があれば取り寄せることはできます。但し、石ですからどうしても欠けやすいので、銀行印や実印など大事な印鑑にはお薦めしません。いざ必要だという時に欠けていては何にもなりませんから。でも絵や書道の落款印として使うのなら、欠けるのも一つの味わいですから構わないと思います。 Q.アクリルやプラスチックの可愛い印材もありますが、こういったものはどうですか? A.これもお客様のご要望があれば取り寄せることはできますが、やはり欠けやすいので大切な印鑑の印材としてはお薦めできません。あくまでも趣味かオモチャとして、遊び心で楽しむものと考えた方が良いと思います。しかし、たとえ認印でも契約書などの重要な書類に捺印すれば実印と同等に扱われることもあります。安易にこういう印材のハンコを使うと、あとで困ることにもなりかねません。「欠けやすい」ということを承知した上で、注意して使った方が良いでしょう。 |